月夜の翡翠と貴方【番外集】



「そんなに、怖がらなくてもいいじゃないか。昨日は言いすぎたよ」

…見え見えの嘘。

むしろ、まだ言い足りない、とでも思っているのではないか。

そんな皮肉が浮かびながら、私は首を横に振る。


「そんなことはどうでもいい。何故、どこに、と、訊いているの」


もうレンウとは別れるのだから、と思うと、敬語さえ使いたくなくなった。

ジェイドは強くレンウを睨むと、意地でもこの場から動かないことを伝える。


「…どこに、ねえ」


レンウは、気味の悪い笑みを浮かべて、呟いた。



「……人目のつかないところ、かな?」


その言葉を零した瞬間、レンウの笑みが変わる。


「…どっ…どうしてそんなところにっ………」

全く笑っていない彼の顔を目に映したとき、背中に強い衝撃を覚えた。


「…………っ、あ」


鈍く、それでいて鋭い痛み。

視界が、揺れる。

頭が痛い。