醜い部分すら、すべてが愛しい。
貴方も、そう言ってくれる?
ねえ、どうか。
この命が終わるまで。
貴方の隣で、その笑顔を見つめさせて。
*
「ジェイドさん、ちょっと来てくれる?」
ニッコリとした笑顔で、私を呼ぶ。
レンウは、少ない手荷物を持って、そう言った。
今は、船着場。
たくさんの旅客や商人たちが、ぞろぞろと行き交う。
その一角で、私とレンウはふたりきり。
「………どこに?」
今、ルトはいない。
何故なら、目の前のこの男が、ルトに席を外すよう言ったから。
正確には、旅立つ友に何かちょうだい、などと言って、買い物にいかせているのだが。
私は、警戒するようにレンウに返事を返した。
だって、怪しい。
その不気味な笑顔も、その誘い文句も。
ひとりは暇だとか言って、私をこの場に残させたことが、何よりも怪しかった。



