月夜の翡翠と貴方【番外集】



醜い部分すら、すべてが愛しい。

貴方も、そう言ってくれる?


ねえ、どうか。

この命が終わるまで。


貴方の隣で、その笑顔を見つめさせて。







「ジェイドさん、ちょっと来てくれる?」


ニッコリとした笑顔で、私を呼ぶ。

レンウは、少ない手荷物を持って、そう言った。


今は、船着場。

たくさんの旅客や商人たちが、ぞろぞろと行き交う。

その一角で、私とレンウはふたりきり。


「………どこに?」


今、ルトはいない。

何故なら、目の前のこの男が、ルトに席を外すよう言ったから。

正確には、旅立つ友に何かちょうだい、などと言って、買い物にいかせているのだが。


私は、警戒するようにレンウに返事を返した。


だって、怪しい。

その不気味な笑顔も、その誘い文句も。

ひとりは暇だとか言って、私をこの場に残させたことが、何よりも怪しかった。