今まさに声を出そうとしていた私は、とっさに口を閉じる。
レンウはルトに、笑って「買ったのかい?」と訊いた。
「え?ああ、うん。適当に、良いものを」
「大雑把だね」
「いいんだよ、使えれば」
そう言って、ルトはさっさと店を出ていく。
私は慌ててその後ろへついていった。
…ああ、まさか。
レンウは…………
見慣れたルトの背中を眺めながら、ジェイドは胸騒ぎが止まらなかった。
*
貴方は、いつも優しい。
私はその優しさに、甘えてばかりで。
何度助けられただろう。
何度慰められただろう。
何度救われただろう。
数えきれないくらいに、
貴方からもらった名前を呼ばれた。
ああ、美しくなれたらいいのに。
心まで、この名に恥じぬくらい、綺麗になれたら。
そう何度願っても、やはり私は奴隷のまま。
けれど貴方は、そんな私を好きだという。
そう、私も。
冷たくて恐ろしい貴方も、
大嫌いな笑顔も。
きっと、嫌だと思いながら、受け入れるのだと思うの。



