月夜の翡翠と貴方【番外集】



ルトは「うん」という声だけ返し、あとはなにも言わない。

レンウはつまらないと思ったのか、他の棚へ歩いていった。


ジェイドも、特にやることはなさそうなので、近くの棚を眺める。


…ルトの剣は、崖でレグートに追い詰められたとき、どこかへいってしまった。


新しいものが欲しい、と言っていたから、買いにきたのだろうが…


私でも持てそうな短剣を見ていると、レンウが口笛を吹きながら、こちらへ来た。


「…短剣でも、使おうと思っているのかい?」


…どうせ上手くは使えないだろう、という気持ちが込められてることくらいは、わかる。

ジェイドはレンウを見ないようにし、「別に」と短く返した。


隣から薄く笑う気配がしたのを感じて、ジェイドは眉を寄せた。


「…この前、貧しい村に行ったんだけどね」


唐突な話に、今度こそレンウを見つめる。