あの日から、冷静になって考えてみると、私がルトの隣にいる事で、彼は損しかしないはずだ、と。
そんなことを思いながら、本人に直接それをいえば、きっと怒られるだろう、とも思う。
またあんな、数日間口をきかれないようなのは、避けたい。
「………おい、ジェイド」
頭上から、低い声。
ぱっと上を見上げると、不機嫌な顔をしたルトの顔が、目に映った。
「なんですか、考え事ですか。俺の声も聞こえないほどのことですか」
「え…あ、いや。ごめん」
唇を尖らせたルトが、む、とこちらを睨む。
「…なんか、多くね?最近。なに考えてんの」
…確かに。
私は最近、気づけば今のような答えの見えない自問を、繰り返している気がする。
…やめよう。
悩みとも言えないような、自問はやめよう。
私は顔を上げてルトを見ると、「ごめん」と謝った。



