月夜の翡翠と貴方【番外集】



「んじゃ、行こっか」


そう言って、荷物を持ったルトが私の手を掴む。

そして、自然と手を繋ぐ。


…肌に伝わる、確かな体温。

もう感じることのないと思っていたぬくもり。


マテンの屋敷から、ルトとミラゼとイビヤが協力し、私を助けてくれた。

あの日から、一週間が経った。


依頼の完了を依頼主へ伝えるために、ミラゼとイビヤは東の街へ出発して行った。

それから今日まで、私とルトは近くの街へ行って、観光にも近い旅をしている。

ルトは何故か凄く楽しそうだから、私は何も言えないのだが、なんだか最近よくわからなくなってきた。

今更ではあるのだが、何故ルトが私を隣におくのか。

きっと訊けば、『好きだから』等と言われてしまうのだろうが…


まず、私は何もできない。

金を稼ぐこともできなければ、得意な事があるというわけでもなく。