月夜の翡翠と貴方【番外集】



「……っ、あっ…」

痛い!

血が流れ始めた脇腹を抑え、男から離れる。

痛みで、ふらつく。

冷や汗が、背中を流れる。

じわりじわりと白の服に、血の赤がにじんでいった。

痛い、痛い。

私を見てニヤ、と笑う男を、キッと睨んだ。

……どう、しようか。

痛みで、うまく思考が働かない。

考えが、まとまらない。

それでも、男は容赦なく剣を振りかざしてくる。

死ぬ、と思った。

このままでは、死んでしまうと。

唇を噛んで、男の剣を避ける。

血が、どんどん流れてくる。

自分の血で、抑えている手が赤く染まる。

剣をギリギリでよけ続ける私を見て、男は余裕たっぷりに笑った。

「よく頑張るなぁ、嬢ちゃん。痛いだろう?見ているこっちが辛くなってくる。楽になったらどうだい」

……この痛みが、私に教えてくれる。

私がまだ、生きているということ。

生きて、愛しい人が来るのを待っている、女であること。

痛い、痛い。

痛くて痛くて、たまらない。

脇腹から、ポタポタと血が落ちる。

……それでも。


彼がまだ生きているから、そう信じているから、死にたくないと思った。