月夜の翡翠と貴方【番外集】



……馬鹿な、男。


「…ああ、安心する。本当に…」

男が動けないほどに、強く抱きしめる。

そして、袖口に隠しておいたナイフを取り出した。

男が夢中で私の身体に触り始めた、その瞬間。

…グサ、と。

私は後ろから、男の脇にナイフを突き刺した。


「…っ、かはっ……!」


身体から手が離れたのを確認し、男から離れる。

男はその場に倒れこみ、血を吐いた。

私はその姿を見下ろして、嗤う。


「……ごめんなさいね。私、もう飼われてしまっているの」


愛しい愛しい、たったひとりのご主人様に。

男は私を憎々しげに見上げ、「くそ!」と声を上げた。

騒ぎに気づいた他の男達が、こちらへ向かってくる。

私は鋭く前を見据え、ナイフを取り出した。


殴りかかってくる男達の脇をすり抜け、確実に刺していく。

ときおり殴られ、床に倒れこんだが、すぐに立ち上がった。

男達が私を見て、ギリ、と歯を食いしばる。

私はその表情を見て、思わず笑いたくなった。