月夜の翡翠と貴方【番外集】



人を殺したあとは、いつもこうだ。

冷酷だなんて言われていても、実は恐怖している。

自分が自分じゃなくなるような、感覚で。

恐怖しているのは、目の前の赤い光景じゃない。

怖いのは、自分だ。

最低な、自分の裏の顔だ。

震える手を、片手で抑える。

唇を噛みながら、俺は弱々しくその名前を口にした。


「……ジェイド…」


闇夜に、その声は静かに響いた。

…好きだよ。

ジェイドといたら、変われるかもしれないと思った。

人のために何かをしようとする、彼女のそばにいられたら。


…それだけできっと、俺は幸せになれる。


そのとき、男達に連れ去られる間際の、彼女の表情を思い出した。

…『絶対に助けに行く』なんて、無謀な事を言った俺に、ジェイドは強い瞳で頷いてくれた。

…あれは、俺を信じ切っているときの目だ。

そして同時に、自分を信じて欲しい、と思っているときの、目だ。

ああいうときのジェイドは、無茶をしやすい。