月夜の翡翠と貴方【番外集】



「…あ。ごめんなさい…」


口を閉じたネオに、私はふ、と笑う。

タツビは俯いて、何も言わなかった。

私は、リボンが風に揺れる窓の外を見上げ、目を閉じる。

そして、口を開いた。


「…あのね。私もね、貴族や王族の人が、嫌いだったの」


私の言葉に、ネオとタツビがこちらを向いた。

「…貴族にいいように扱われて、この国ごと、憎んでた。すごく、すごく」

ネオが悲しく、目を細める。

タツビの拳が、ギュ、と握られた。

「……でもね。ルトと会ってね、いろんな人と、知り合ったの」

思い出そうとすれば、鮮明なほど残っている、人々の笑顔。

スジュナに、ラサバ、劇団の人々。

リロザとミラゼ、ムクギ、酒場の人々。

セルシア、ロディー、ノワード…

様々な身分の人々の、暖かさに触れた。

「それまでこの国で、人の残酷さにしか触れてこなかったから……この国の人の優しさを、痛いほど感じたわ」

ネオがまた、目を潤ませて俯く。

…ふたりは子供ながらに、この国の醜さを知っていた。

だからこそこの国の優しさも、充分に知っているはずだ。