月夜の翡翠と貴方【番外集】



……この国の格差は、厳しいけれど。

でも…

「…あんな人達も、いるんだよな」

頭上で、ルトが呟く。

奴隷の解放を訴えた人々を、私は何も言えずに見つめていた。






「星が出てきたなー」


ルトが、夜空を見上げる。

先ほどの出来事ですっかり明るさを失ってしまった子供達は、ルトの言葉に何も言わない。

苦笑いを浮かべるルトの横で、私も夜空を見上げた。


年に一度とあって、村人達は徹夜で酒を飲み騒ぐらしい。

遅い時間になっても、祭りの賑やかな雰囲気は収まろうとはしていなかった。

落ち込む子供達を見て、ルトはどうしたものかという顔をする。

私も周りを見渡して、ふたりがまた目を輝かせるようなものはないかと探した。

すると、近くから村人の女の声が聞こえた。


「あっ、『花舞い』が始まるわ!」


花舞い…?

女の見上げている方へ、目を向ける。

広場の真ん中に、高い木の梯子のいちばん上に足をかけた女性が、大きな籠を持っていた。