月夜の翡翠と貴方【番外集】



「ったく、これだから金持ちは」

「そ、そんな言い方しなくていいじゃなーい」

また始まった、とルトが面白そうに笑う。

ふたりの様子を微笑ましく眺めていると、近くで聞き覚えのある金属音が聞こえた。

ーージャラ、ジャラ…

祭りの派手な物音に紛れていても、確かに聞こえてくる。

ルトも子供達も、まだ気づいていない。

私はその音に、無意識に恐怖を覚えた。

…聞き覚えのある、なんてものじゃない。

この、音は。


「……鎖の音…」


私の呟いた言葉に、ルトが目を見開いてこちらを向く。

そのとき、目の前の道を賑やかに歩いていた人々が、突然どよめき始めた。

……ジャラ、ジャラ…

『それ』は不気味な音と、太く頑丈な鎖とともに、歩いていた。


「……あれって……」


恐怖したネオが、青ざめた表情でそれを見ている。

道ゆく人々が、眉をひそめて道を開けて行く。

その中央で、堂々と歩いているのは。


……奴隷商人と、首輪で繋がれた奴隷たちだった。


自然と身体が震え、冷や汗が止まらなくなる。

ルトが、私をそっと引き寄せた。