月夜の翡翠と貴方【番外集】



「…『オレガノ』。シソ科の多年草で、薬用のハーブになる」

その隣の花に気づいて、「これはストック」と言う。

「黄色だから、花言葉は『さびしい愛』。薬草としても使える」

淡々と説明していったわたしの頭を、ナタナは「よく知っているね」と言って撫でた。

「…ナタナ様がくれた本を、読んでただけよ」

それだけ言うと、わたしはまた花へ目を移す。

彼はクスッと笑って、「マリア」と言った。


「…花は、好きかい?」


彼は、目を細めて花々を見つめる。

わたしは少しの間黙ったあと、「うん」と返事をした。


「……みんな、綺麗だから」


ひとつ残らず、綺麗。

どんな色合いをしていても、どんなに形が他と違っていても。

色鮮やかな花は、みんな綺麗。

……狡い、くらいに。