月夜の翡翠と貴方【番外集】



……不器用でも、それでも。

想いは、きっと届く。






ついに、夜会の日がやってきた。


オリザーヌ邸では、朝から夜会の準備で使用人達が慌ただしく動き回っている。

午後になると、セルシアとロディーも準備を始めた。

私達も前回と同様に、ノワードから召使いの服を借りようと思っていた…の、だが。


「そうだわっ、ジェイドさん!よろしければ、私のドレスを着ませんか!?」


召使いに手伝ってもらいながら、セルシアがドレスを着ている。

同じ部屋で着替えようと思い、ノワードを待っていたとき、彼女が思いついたようにそう言ったのだ。

「……えっ!?」

突然の提案に、髪のリボンを解こうとしていた手が止まる。

私が、セルシアのドレスを?

「私がもともと持っていた二着、もう売ってしまおうかと思っているのです。ですから、最後にジェイドさんに着ていただきたくて」

セルシアが今日着るのは、ロディーから贈られたドレスだ。

今までに着ていたものを全て手放すことで、けじめをつけようとしているのかもしれない。

…しかし、だからといって…

「セ…セルシア。私はただの旅人です。他の貴族の方々と同じようにドレスを着るなんて、さすがに恐れ多いわ」

「そんなことありません!貴女のように見目麗しい方が着飾らないなんて、もったいない」

ね?と言って、ドレスを着たセルシアが私の背中を押して、部屋を出ようとする。