月夜の翡翠と貴方【番外集】



「え、ええっと…そ、そう、ですね」

「でしょう!?」

…まさか怒っているのか、彼女は。

ロディー、に。

「今まで肝心なことをなんにも言って下さらなかったから、嬉しかったのに…!どうして今度はなにもしてこないんですか!」

その言葉に、ロディーの顔がかぁっと赤くなった。

ルトが、「セルシア嬢、言うねー」と感心にも似た感想をこぼす。

…なにも、してこないって。

確かにロディーは、ルトが『身体ではなく言葉で落とせ』と言ってから、セルシアにあまり触れていないように見えたが…

それは彼が、セルシアのことを想ってのことだ。

それが彼女には、冷たく見えてしまったのだろうか。


セルシアはボタボタと涙を流しながら、不満気にロディーを睨む。

彼もそろそろ言い返そうと思ったのか、「…だ、だがな」と口を開いた。

「お前が嫌だと言うから、俺はなにもしなかったんだぞ」

「わっ、わかっています!けれど、本当になんにもしないから…ふっ、不安になるじゃないですか…」

困った顔をするロディーに、思わず同情した。

…セルシアからしてみれば、今までロディーの気持ちが曖昧なまま触れられていたから、拒んでいたのだろう。

だが、言葉で伝えようと頑張っているロディーを見て、拒もうという思いはなくなっていった。

けれど今度は、ロディーが全く迫ってこないから、不安なのだと。

……女というのは、身勝手なものだ。