「…いっ、いい、一緒のお部屋で…!?」
セルシアが顔を真っ赤に染めて、紅茶のカップを持った手をカタカタと震わせ始めた。
…むしろ、今まで一緒の部屋で寝ていなかったことのほうが驚きなのだが。
それにしても、自分で言わずに召使いの女に言わせるところが、当主の性格を伺わせる。
…なんだかんだと言っても、彼は彼なりに、セルシアの恋路を見守っているようだ。
「お部屋をご一緒されるのであれば、ご用意致しますが…」
「え、ええ、えっと……」
ぐるぐると目を回すセルシア。
…無理です、と即答しないのは、彼女のロディーに対する気持ちに変化があったからだろう。
その様子を見たロディーが、ふぅ、と小さくため息をついた。
困惑しているセルシアに、そのため息は気づかれない。
厳しい顔をしたロディーが、口を開いた。
……『用意してくれ』、とでも言うかと思ったら。
「……いや、いい。今まで通り、別々にしてくれ」
………えっ。
彼にしては珍しい返答に、セルシアまでもが目を見開く。
予想していなかったのか、召使いの女は気まずそうに「…か、かしこまりました…」と言って部屋を出ていった。



