「……食事の、時間だったな。行こうか」
私から顔をそらして、彼は歩き出してしまう。
どうして、なんて訊けない。
だって私、今までずっと貴方を傷つけていたもの。
……でも。
「……ロディー様……」
小さな小さな呟きは、誰の耳にも届かない。
…不安になるくらい、許してはいただけませんか。
*
それからオリザーヌは、一週間ほど結婚準備で慌ただしかった。
私とルトはその間、一度モンチェーンへ帰るというロディーに同行したりして、暇を潰した。
そして、親交のある家を招いて結婚を発表する夜会の、三日前。
再びロディーが、ディアフィーネへやってきた。
「ロディー様っ!」
明るい顔をして出迎えたセルシアに、ロディーが恥ずかしそうに「あ、ああ」と目をそらした。
…この数週間で、随分と仲良くなったようだ。
その様子を見て、ルトがニヤニヤと隣で笑っている。
嬉しそうに笑うセルシアに、ロディーは耐えられなくなったらしい。
そのままスタスタと、セルシアの横を通り過ぎてしまった。
……今までにもこんなこと、何度もあったのに。
気のせい、だろうか。
その瞬間、セルシアがショックを受けたように見えたのは。



