月夜の翡翠と貴方【番外集】



ロディー様…


もう、抵抗しようという気は起きなかった。

ただ、この澄んだ瞳を、ずっと見つめていたくて。

自然と、目を閉じる。

小さく、けれど確かに、心臓が音を立てていた。


あと少しで、唇が触れる…そんな距離のなかで。


「……っ」


ロディーが、突然バッと私の身体を離した。

…え?

見ると彼は、我に返ったような、焦ったような顔をしている。

戸惑う私を床に降ろし、目を泳がせていた。


「………ロディー様…?」

「……悪い」


そう言って目を逸らす彼に、なんと言葉を返していいのかわからない。

…キスを、しようとしたのでしょう?

今までなら、構わず続けていたじゃない。

貴方が私へ、必死に気持ちを伝えようとして下さっていること、私ちゃんと気づいています。

本当に私を愛してくださっていること、もう充分に伝わっています。

だから、拒まなかったのに。