月夜の翡翠と貴方【番外集】



「…私も、白が良いと思います。よくお似合いでした」

「じゃあ、白にしますわ!」

飛び跳ねるくらいに軽やかな足取りをして、セルシアがたくさんのレースがあしらわれた白のドレスを手にとる。

もう一度自分の身体にドレスを当てて、ふふっと微笑む。

そして、ロディーに向かって笑いかけた。


「ありがとうございます、ロディー様!」


…ロディーは照れ臭そうに、フン、と目をそらした。





その後もふたりは順調に仲を深めていき、セルシアの顔に笑顔が増えてきた。

ロディーの不器用な愛情を、必死に気付こうとしているようだ。

一方でロディーは、なかなかプロポーズの言葉が言えず、やはり悶々としていた。

いざ『好きだ』という言葉を口にするのは、とても難しいものなのだ。

偶然邸のなかでルトとふたりになったとき、そう思った。


「あのふたり、案外上手くいきそうだな」


そう言って笑う、ルトを見上げる。

…思えばルトは、恋人達の恥ずかしい言葉さえも、躊躇なく言ってしまう男だ。

もちろん、私よりも彼は喋るのが得意であるし、女の扱いにも慣れているから、当然のことではあるのだけれど。

…私も、彼のようにあっさりと言えたらいいのに。

ルトがくれる言葉の分、私も何かを伝えられたらいいのに。