月夜の翡翠と貴方【番外集】



「!」


物凄い力で、脇腹を蹴られる。

鈍い痛みと共に、床へ倒れこんだ。

木製の樽が積み重なった場所に倒れんこんだために、派手な音が立つ。

「はは、油断するからよ!」

蹴られたところが、痛い。

「……はぁ、は…」

よろよろと立ち上がりながら、私は女を睨みつけた。

窓から差す月明かりが、部屋へ伸びている。

…その光が、一部分だけ、暗くなった。

女は私の顔を見て、唇を噛む。


「…なによ、どうして笑ってるの…!」


…だって。

可笑しいんだもの。

気が抜けるから、こんなときにまでふざけないでほしい。

床に伸びている、月明かりの端にできたピースサインの影を見つめたあと、私は静かに歩き始めた。

すると、ドタドタという音と共に、残りの三人が血相を変えて部屋へ入ってきた。

…ああ、そんなに怒った顔をしていたのか。

私が、散々彼らを振り回すことができた証拠。


…ねえ、ルト。

私、上手くやれたのかな。


「…この村は今、復興しようと皆が一生懸命なの」


月明かりが伸びる、窓の近くへと歩く。