月夜の翡翠と貴方【番外集】



女の位置がわからないので、容易に進めない。

低い位置で、適当にナイフを飛ばす。

人には当たらず、それは向こうの壁に当たったのか、カランという音と共に落ちた。

「そっちね!?」

堪らず叫んだ女が、そちらへ向かっているのがわかる。

今の声からして、女は私の進行方向にいたようだ。

私はさっと態勢を整えると、音が立つのも気にせずに、走った。

途端に、様々な音が私のあとをついてまわる。

「…くそっ!どこだ…!」

敵がそれに気づき、動揺し始めたのを確認して、私は壁を伝って扉を探した。

取ってらしきものを見つけ、サッと開いて部屋から出ると、大きな音を立てて閉めた。

そのまま、先程の割れた窓から入った部屋へ戻る。

三人が追って来ているのが、ドタドタという足音でわかった。

わずかに開いた扉の奥からは月明かりが見えて、そこへ入ろうと走る。

…しかし、その部屋へ足を踏み入れたとき。

その扉のすぐそばで、私が太腿にナイフを刺した女が、うずくまったまま待ち構えていた。