月夜の翡翠と貴方【番外集】



「あなた達が盗みをしようとする度に、またこうやって、刺してやる。…あなた達も、毎回怪我人が出るのは嫌でしょう?」


かっと、男と女の顔が、真っ赤に染まる。

…挑発しろ、挑発しろ。

血のにじむ傷口を押さえて倒れこんでいるふたりが、私を見上げていた。

それを見て、私は見下すように、ニヤッと笑って。


「……ほら。今のうちに、殺さなくていいの?」


血が出るほど唇を噛み締めた女が、私へ向かってくる。

短剣を持った女は、ぶんぶんとそれを振り回した。

「……っ…!」

歯を食いしばって、それを避ける。

…早く、窓から出ないと。

まだ怪我をしていないこのふたりを、おびき寄せて。


女のナイフを避けながら、後ろへ後ずさる。

「…この女ぁっ…!」

そのまま窓の方へ行こうとしたが、倒れこんでいた男に足を引っ掛けられて、倒れこんだ。

「…っ、!」

「邪魔をするな…!」

上等な剣が、私めがけて振り下ろされる。

間一髪でそれを避けると、急いで別の部屋へ走った。