月夜の翡翠と貴方【番外集】



退治屋と対抗できる力を持った人間なら、もっと金目のものが豊富にあるような、盗みがいのある街へ行くだろうと。

つまり、この強盗集団たちの実力は、さほどでもないということだ。

…彼の、言った通り。

こんな女ひとりも殺そうとしないで、彼らは今にも逃げようとしている。

私はフッと笑うと、「いいの?」と静かに言った。

奥のふたりが部屋へ戻って、金を取りに行こうとしている。

しかし、私の言葉に眉を寄せ、振り返った。

…ふわりとフードをとり、本来の姿を見せる。

舞う碧の髪が、月明かりに照らされた。


「…あなた達がここで逃げても、私はまた邪魔をしにくるわ。何度でも、何度でも。あなた達がここへ来る度に」


…もしも私が、強盗を見つけたら。

そのとき、数人の強盗達を相手に、『無理だ』と思ったときは。


ー…『応戦しなくていい。お前はただ、逃げるだけでいい。挑発しながら、敵を外へおびき寄せろ。…あとは、俺がやる』


彼がそう、強い瞳で言っていたから。

私はそれを信じて、命をかけて『囮』になるだけ。