月夜の翡翠と貴方【番外集】



「…返事をしろ!貴様は…」

後ろから投げかけられたその言葉と同時に、私は振り返った。

そして、ナイフを思い切り男の脇へ突き刺す。

「…! ぐぁっ………」

男が刺された箇所を押さえて、うずくまった。

ー……一人目。

私はすぐさま外套を脱ぐと、驚いている女にそれを押し付けた。


「ー…逃げて」


耳元で囁くと、女の目が見開かれる。

「…貴様……!!」

普段通りの白の服装をした私を、男が睨みつけてくる。

殴りかかってきたその拳をすんなり避けると、痛みでふらふらしている男へ、思い切り蹴った。

バランスを崩した男が、床に倒れこむ。

こちらの物音に気づいたのか、奥の扉からふたりの女とひとりの男が出てきた。

「…なに!?」

「だ、誰だお前……!」

皆驚いた顔をして、私と倒れた男を交互に見ている。

…全部で、四人。

後ろで未だよろよろと立ち上がろうとしている女へ、私は叫んだ。


「早く逃げて!!」


その目が、ハッと見開かれる。

彼女は黒の外套を羽織りながら、危な気に玄関へ走り始めた。