…見つけた方が、先に盗賊へ仕掛ける。
ふたりで、そう決めていた。
家の住民の安全を最優先にして、敵をひとりでも多く逃げられないよう足止めする。
最も、見つけたのがルトだった場合は、すぐに敵を仕留めることもできたかもしれないが。
…私に、集団を相手にするのは、現実的に考えて、不可能だ。
だから私は、住民を逃がすことと、ルトが来るまでの時間稼ぎをする。
…そう、それだけだ。
ぐ、ともう一度ナイフを握りしめると、私は足音を殺して割れた窓のそばへ走った。
耳をすませば聞こえてくる、家のなかを物色しているのであろう様々な音と、話し声。
…住民らしき女のすすり泣き声も、わずかに聞こえた。
……私が、やらなければ。
窓の縁へ足をかける。
ストっという小さな音と共に、私は家のなかへ降り立った。
「………誰だ?」
黒装束の男が、座り込んだ住民の女の前に立って、こちらを見つめている。
部屋の中は暗い。
どうやらこの部屋には、この男以外いないようだ。



