月夜の翡翠と貴方【番外集】



この方法は、ルトとノワードが話し合って決めたらしい。

今持っているこの箱も、もちろん本来の使い方ではないのだが、敵にこちらの居場所を知られては、元も子もない。

私は足音を立てないよう、鉄製の箱が音を鳴らさないよう、そろりそろりと歩いた。


…強盗は、どちら側に来る?


もしもこの時間に来なくても、夜通し見張ることになっている。

来ないかもしれない。けれど、来るかもしれない。

被害にあった村人が言うには、強盗は四、五人の集団らしい。

真っ黒な装いで、民家の窓を躊躇なく壊して侵入してくる。

住人には大人しくしているよう脅して、金目のものはほとんど盗み取って行く。

大声でも出せば、あっという間に殺してしまうような、そんな恐ろしさらしい。


…夜の静けさが、肌に刺さる。

ちらりと上層のほうを見上げるが、火はひとつも灯っていない。

…思えば、こんな夜更けに外をひとりで出歩くなんて、ずいぶん久しぶりだ。

だから、少しばかり、不安なだけ。

…それだけ、だ。