…もしも、また。
会えたとしたら。
母様は『今の私』も、綺麗だと言って下さいますか…?
鏡ごしに見えたセルシアの顔は、とても嬉しそうに、愛らしく微笑まれていた。
*
「さてと。そろそろだな」
ルトが時計を見てそう言ったのは、日付が変わる頃だった。
彼はソファにかけていた上着を着ると、セルシアとの話をやめた私を、じっと見つめた。
「行くぞ」
…仕事のときの、目。
真剣で、冷たい色をした深緑だった。
その瞳に、思わずどきりとする。
「…うん」
それだけ返事をして、私はルトの背中を追った。
「どっ…どうか、お気をつけて!」
部屋を出て行こうとする私達へ、セルシアは不安気な瞳を揺らして、そう言った。
「…無茶はなさらないで下さい」
ノワードも、心配そうにこちらを見つめている。
私とルトは小さく笑った。
…なにかあれば、彼女たちが助けてくれる。
こんなに心強い事は、ない。
「大丈夫。さっさと仕留めて知らせに来るよ」
ルトが明るくそう言うと、セルシアは微笑んで瞳に涙を浮かべた。
それを視界の端にうつしてから、私達は部屋を出て、邸を出た。
階段を降りてからは、私が村の東側へ、ルトが西側へ分かれて行った。



