月夜の翡翠と貴方【番外集】



…もしも、また。

会えたとしたら。


母様は『今の私』も、綺麗だと言って下さいますか…?


鏡ごしに見えたセルシアの顔は、とても嬉しそうに、愛らしく微笑まれていた。






「さてと。そろそろだな」


ルトが時計を見てそう言ったのは、日付が変わる頃だった。

彼はソファにかけていた上着を着ると、セルシアとの話をやめた私を、じっと見つめた。


「行くぞ」


…仕事のときの、目。

真剣で、冷たい色をした深緑だった。

その瞳に、思わずどきりとする。

「…うん」

それだけ返事をして、私はルトの背中を追った。


「どっ…どうか、お気をつけて!」


部屋を出て行こうとする私達へ、セルシアは不安気な瞳を揺らして、そう言った。

「…無茶はなさらないで下さい」

ノワードも、心配そうにこちらを見つめている。

私とルトは小さく笑った。


…なにかあれば、彼女たちが助けてくれる。

こんなに心強い事は、ない。


「大丈夫。さっさと仕留めて知らせに来るよ」


ルトが明るくそう言うと、セルシアは微笑んで瞳に涙を浮かべた。


それを視界の端にうつしてから、私達は部屋を出て、邸を出た。

階段を降りてからは、私が村の東側へ、ルトが西側へ分かれて行った。