月夜の翡翠と貴方【番外集】




「私などが、セルシア様とご友人なんて。恐れ多いです」

「どうして、そんなこと仰るんですか。あまりご自分を卑下なさらないで」

戸惑う私の瞳を、セルシアはまっすぐに見つめた。

そして、美しく微笑んで。


「…私は貴女を、尊敬しているのですから」


橙の瞳を、大きく見開く。

…尊敬…

セルシアが、私に。

こんなに落ちぶれた私を、私の憧れた姿をしたセルシアが、尊敬、なんて。

「…強くて、お優しくて。情けない私のことを、こんなにも真剣に考えて下さった。貴女はとても、素敵な女性だわ。…憧れています」

……母様。

私は、令嬢ではなくなってしまったけれど。

こんなにも、穢れてしまったけれど。


それでも、誰かから尊敬されるような、そんな女性に、なれたのでしょうか。