月夜の翡翠と貴方【番外集】




「好きな色は、なんですか?」

色………?

こちらから、引き出しの中身は見えない。

セルシアはその中に入っているものを、穏やかに見つめていた。


「………緑」


私の口から零れたその色の名前に、セルシアはふふっと笑う。


「あの方の、お色ですね」


…図星をつかれて、恥ずかしくなった。

ルトの、瞳の色だ。

好きな色なんて、そのくらいしか思い浮かばない。

「…じゃあ、この色がいいかしら」

すると、シュルッと小さな音を立てて、それが引き出しから出てきた。

…深緑の、リボン。


「差し上げます」


髪を結うためのそれを、セルシアは笑ってこちらへ見せた。

鈍く光沢を放っているリボンは、明らかに高価なもので。