月夜の翡翠と貴方【番外集】



…ずっとひとりだと、思っていたから。

リズパナリの家を出て、身寄りも友人もいない、私はひとりぼっちになった。

主人はいたけれど、私はいつもひとりで生きていた。戦っていた。

…けれど、もう、ひとりじゃない。

私は、ひとりじゃない。


ルトが一緒に、戦ってくれる。


「…うん。ルトが、いるもんね」

涙の浮いた瞳を細めて、笑う。

ルトは「ん」と嬉しそうに言うと、もう一度強く私の手を握った。


「…負けんなよ。敵にも、…自分にも」


…負けない。

だって、ルトがいるから。

彼が諦めないなら、私も諦めない。

ルトの言葉は、私を強くする。






「ジェイドさん、髪、結って差し上げますわ」


篝火の準備が終わり、オリザーヌの邸へ戻ったとき、セルシアがそう声をかけてきた。