月夜の翡翠と貴方【番外集】



「…わかりましたわ。私、もう逃げません」

セルシアの強い瞳と言葉に村人達は顔を見合わせ、微笑んだ。





それから作業は淡々と進んでいき、予定していた数の篝火を無事設置し終えることができた。

村人達への報酬は、また後ほど支払われるということになった。

「じゃあ皆さん、今日はありがとうございました!」

帰っていく村の者たちへ、ルトが爽やかな笑顔で見送る。

彼らには、もしも今日の夜に強盗がでたら、そのときに仕留めると伝えておいた。

夜は出歩かないこと、なるべくひとつの部屋に家族全員が固まることなども、他の村人達に伝えてくれるそうだ。


空の夕暮れに灰色が混じるようになったころ、私とルトは階段のそばで、顔を見合わせた。


「…さて。俺らの仕事は、こっからだ」

「うん」


夕暮れの橙が、ルトの茶髪を透かしている。

それを見つめていると、ルトがおもむろに右手を上げた。

「ん」

なんだろうかと思って首を傾げると、何故か笑われた。