「…わかりましたわ。私、もう逃げません」
セルシアの強い瞳と言葉に村人達は顔を見合わせ、微笑んだ。
*
それから作業は淡々と進んでいき、予定していた数の篝火を無事設置し終えることができた。
村人達への報酬は、また後ほど支払われるということになった。
「じゃあ皆さん、今日はありがとうございました!」
帰っていく村の者たちへ、ルトが爽やかな笑顔で見送る。
彼らには、もしも今日の夜に強盗がでたら、そのときに仕留めると伝えておいた。
夜は出歩かないこと、なるべくひとつの部屋に家族全員が固まることなども、他の村人達に伝えてくれるそうだ。
空の夕暮れに灰色が混じるようになったころ、私とルトは階段のそばで、顔を見合わせた。
「…さて。俺らの仕事は、こっからだ」
「うん」
夕暮れの橙が、ルトの茶髪を透かしている。
それを見つめていると、ルトがおもむろに右手を上げた。
「ん」
なんだろうかと思って首を傾げると、何故か笑われた。



