月夜の翡翠と貴方【番外集】



「こんな雑多な仕事、お嬢様がするもんじゃない。いいんですよ、こっちは気にしなくても」

「で、でも…」

すると、あとから戻ってきた老婆が「そうだよ」と言った。


「この場はわしらに任せなさい。…あんたにはあんたの、すべきことがあるだろう」


…すべき、こと。

セルシアは、ハッとしたように目を見開く。

「あんたが村のためにすべきことは、こんなことじゃあない。どうか、あんたにしかできないやり方で、ディアフィーネを救っておくれ」

目を細めてセルシアを見つめる老婆を、セルシアは呆然と見つめ返していた。


「……私にしか、できないことで……」

見ると、村人達は優しげにセルシアを見つめている。

…セルシアにしか、できないこと。

ロディーと結婚して、村を立て直すことだ。

セルシアは考えるように俯くと、ぎゅっと手のひらを握りしめた。


「……そう、よね。私………」


そして、決意したようにパッと顔を上げる。

村人達を見回すと、唇を噛んで、こくんと頷いた。