ノワードを連れて戻ってきたセルシアは、それはそれは目を丸くしていた。
「……!!」
集まった村人達の姿を見るなり、彼女はバッと頭を下げた。
「ありがとうございます!」
貴族の令嬢に頭を下げられるなど思いもしなかったのだろう、村人達は困惑している。
男のひとりが、セルシアに「顔を上げて下さい」と申し訳なさそうに言った。
「私らは働きに来ているだけですから。むしろ、あなたが強盗について動いて下さって、皆感謝してるんです」
もう諦めていましたから、と男は言う。
セルシアは、今度こそ瞳に涙を溜めた。
「か、感謝だなんて…こちらこそ、です」
またもペコペコと頭を下げるセルシアに、ノワードはあきれたようにため息をついた。
「まったく、お嬢様は。何の相談もなしにおひとりで決めてしまわれて…毎回、後から知る私の身にもなって下さい」
しかし、そんなノワードを見て、セルシアはふふっと笑う。
「でも、手伝ってくれるんでしょう?」
白い髭を震わせて、彼は困ったように眉を下げた。
「当たり前です」
セルシアが、嬉しそうに笑う。
……いい執事だ。
元気になったセルシアは、「ではっ」と明るく言うと、ぱっと顔を上げて。
「今日は、よろしくお願いしますね!」
*
その後ノワードによって、集まった人間の確認を行った後、ルトから作業の説明をした。



