月夜の翡翠と貴方【番外集】



ノワードを連れて戻ってきたセルシアは、それはそれは目を丸くしていた。

「……!!」

集まった村人達の姿を見るなり、彼女はバッと頭を下げた。

「ありがとうございます!」

貴族の令嬢に頭を下げられるなど思いもしなかったのだろう、村人達は困惑している。

男のひとりが、セルシアに「顔を上げて下さい」と申し訳なさそうに言った。

「私らは働きに来ているだけですから。むしろ、あなたが強盗について動いて下さって、皆感謝してるんです」

もう諦めていましたから、と男は言う。

セルシアは、今度こそ瞳に涙を溜めた。

「か、感謝だなんて…こちらこそ、です」

またもペコペコと頭を下げるセルシアに、ノワードはあきれたようにため息をついた。

「まったく、お嬢様は。何の相談もなしにおひとりで決めてしまわれて…毎回、後から知る私の身にもなって下さい」

しかし、そんなノワードを見て、セルシアはふふっと笑う。

「でも、手伝ってくれるんでしょう?」

白い髭を震わせて、彼は困ったように眉を下げた。

「当たり前です」

セルシアが、嬉しそうに笑う。

……いい執事だ。

元気になったセルシアは、「ではっ」と明るく言うと、ぱっと顔を上げて。


「今日は、よろしくお願いしますね!」





その後ノワードによって、集まった人間の確認を行った後、ルトから作業の説明をした。