月夜の翡翠と貴方【番外集】


「しかし、いくら腕の立つ方々でも、夜は真っ暗になってしまう村で強盗を倒すのは、至難の技。ですから、村に薪で火を灯したいのです!」

木材は既に用意してありますわ、とセルシアが言うと、村の男のひとりが、「じゃあ、手伝って欲しいことっていうのは」と言った。

「そうです。篝火(かがりび)をつくるのです。今のままでは、人手が足りません。事は急を要します」

セルシアの言葉に、より一層辺りが騒がしくなってくる。

強盗に関しては、村人達も他人事ではないのだ。

セルシアは村人達の顔を見回したあと、「では」と落ち着いた声で言った。

「お手伝いに参加して下さるという方は、このあと十時に、この場に集まって下さい」

そう言って去っていくセルシアの姿を、村人達は不安気に見つめていた。

…セルシアの瞳は、真剣だったから。

十時まであと、三十分ほどだ。

一体何人集まるだろう。


村人達は私とルトの存在をちらちらと気にしながらも、家へ帰っていく。

しかし、男達の中にはその場に残る者もいた。

私達は、セルシアが戻ってくるまで、その様子を見ていたのだが…

やがて帰ったと思っていた人が戻ってくるなど、十時になるころには十三人の男女が集まっていた。


「…へえ。集まるもんだなぁ」


隣で、ルトが驚いている。

集まった彼らを見てみると、力のありそうな男がほとんどだが、何人か女や老婆もいる。

皆、このままでは村が危ないと思って来たのだろうか。

報酬を目当てに来ている者も、少なくないとは思うが。

…それでも、集まった。


セルシアの話を聞いて、村の者が手伝いに来たのだ。