月夜の翡翠と貴方【番外集】



ロディーの邸から荷車を借りて運んだのだが、この村全体へ均等に灯りを設置する…ともなれば、こんな量にもなる。

当然、女の私とルトの二人だけで作業をしていたら、日が暮れてしまう。

明後日ロディーが到着するまでに、篝火台を設置し終えたい。

大切な客人を危ない目に合わせるわけにはいかないので、明日の夜には強盗を仕留めておきたいのだが。


「ジェイドさん、ルトさん!」


すると、邸から出てきたセルシアが、パタパタと足音を立ててやってきた。

彼女は私とルトと、その真ん中に無造作に置かれた薪の山を見ると、ぐっと拳を握りしめた。


「むっ…村の方々に、呼びかけてみます」


そう言うと、彼女は階段をおりていく。

「えっ…セルシア様!?」

ルトが慌てて追いかけていったので、少し迷ったのちに私も階段を降りた。

セルシアは、村の中心に当たる通りへ走っていく。

しかし、追いついたルトがそれを止めた。

「ちょっと待って!」

振り返ったセルシアは、焦ったような顔をしている。