月夜の翡翠と貴方【番外集】



「……………」

途端に、その場の空気が張り詰める。

皆が険しい顔をして、ふたりを見ていた。


ロゼは少しの間目をつむると、すぐに顔を上げた。

そして、床に座り込むスジュナを見つめる。

ふたりの距離は、少しだけ離れていて。

ロゼはせわしなく辺りを見回し始めると、スジュナを見て目を見開く。

そして、口元に添えた手を、僅かに震わせた。

「『…レミール…レミールなの…?』」

その震えた声には、信じられない、という感情がこもっている。


スジュナはその声に顔を上げると、唇を噛んで辺りを見回した。

「『その声は、ピスパニラ…?』」

ロゼへと視線が止まると、目を見開いてその名を呼ぶ。


「『ピスパニラ!』」


するとロゼは、口元を手で覆った。