月夜の翡翠と貴方【番外集】



各自で休憩を取りながら、稽古場の中央に立つふたりを、皆が見つめる。

ジェイドとルトは、稽古場の隅で様子を見守っていた。

昨日まで諸用で留守にしていた団長も、今日は厳しい面持ちでふたりの少女の近くに立っている。


スジュナの顔は、少し不安げな色を残してはいるが、しっかりとロゼを見つめている。

椅子に座ったロゼは、やはり不機嫌な顔をして、スジュナを見ていた。


「…これより、スジュナの演技試験をはじめる。ふたりとも、練習の成果を出せるよう、頑張ってくれ」

…団長も、留守の間にふたりの練習がうまくいかなかったことを知っている。

きっと、個人の練習の成果を、と言っているのだろう。


「準備が整い次第、始めなさい」


その言葉で、ロゼがスジュナの目を見た。

スジュナが、小さく頷く。

ロゼはひとつ深呼吸をすると、胸に添えた右手を、そっと前へと動かした。


「『あら、可愛らしいお嬢さん。どこから来たの?』」


…当然かも、しれないけれど。

全く違うと、思った。

私が演じた『ピスパニラ』とは、全く違う。