月夜の翡翠と貴方【番外集】



『パパがうれしいから』。

それが、スジュナが頑張るいちばんの理由であり、活力なのだ。


「…うん。頑張って。『子役』になって舞台に立つスジュナちゃん、私達も見たいな」


優しく頭を撫でると、スジュナは嬉しそうに目を細めた。


「…ほんと、お父さん大好きだな」

ルトが呟いた言葉に、耳元で「うん」と答える声がする。

…スジュナにとって、今は父がすべてだ。

自分を奴隷屋から買って、育ててくれたラサバ。

その彼から離れることなど、しばらくはないのだろう、と思う。

きっと、スジュナの行動をラサバ以外の何かが決めるようになったとき、少女は『奴隷』から『娘』へと変わるのだ。


「……頑張ってね、明後日」


「うん!」


…スジュナには、この明るい笑顔が似合う。

明後日、うまく行きますように。







そして迎えた、試験の日。

稽古の合間、お昼の休憩時間にそれは行われることになった。