『パパがうれしいから』。
それが、スジュナが頑張るいちばんの理由であり、活力なのだ。
「…うん。頑張って。『子役』になって舞台に立つスジュナちゃん、私達も見たいな」
優しく頭を撫でると、スジュナは嬉しそうに目を細めた。
「…ほんと、お父さん大好きだな」
ルトが呟いた言葉に、耳元で「うん」と答える声がする。
…スジュナにとって、今は父がすべてだ。
自分を奴隷屋から買って、育ててくれたラサバ。
その彼から離れることなど、しばらくはないのだろう、と思う。
きっと、スジュナの行動をラサバ以外の何かが決めるようになったとき、少女は『奴隷』から『娘』へと変わるのだ。
「……頑張ってね、明後日」
「うん!」
…スジュナには、この明るい笑顔が似合う。
明後日、うまく行きますように。
*
そして迎えた、試験の日。
稽古の合間、お昼の休憩時間にそれは行われることになった。



