月夜の翡翠と貴方【番外集】



「『その声は、ピスパニラ…?ピスパニラ!』」

こちらに気づくと、ぱあっと顔を明るくする。

私はその言葉と同時に、「『レミール!』」と大きな声を出した。

スジュナへ駆け寄り、その小さな体を抱きしめる。

フードが、ふわっと浮いた。


そして視界の端に見えたのは、あの太陽のような笑顔だった。

見たかった、大好きな笑顔。


ここで最後のシーンは終わりだが、スジュナは私から離れようとしなかった。

「……ふふ」

ぎゅう、と抱きしめ返してくれる。

見える少女の顔は心地良さげで、離れるのはまだいいかと思った。


「スジュナちゃん、演技上手いなぁ」


そんな私達の近くへ、ルトが微笑みながら来る。

スジュナは照れたように「いっぱい練習したの」と言った。

「スジュナが演技うまくなって、役者さんになったら、パパはすごくうれしいって言ってたの。だからね、いっぱい練習したの!スジュナ、『こやく』になる!」

…この子が頑張るときは、いつも父のためだ。