月夜の翡翠と貴方【番外集】



…ロゼとは、もう練習できないと思っているのだろう。

だから、女である私に、練習を手伝ってと言ったのだ。


ちら、とルトを見ると、彼は優しくこちらの様子を見つめていた。

私の視線に気づくと、「ん?」と首を傾げる。


「……ううん。…笑わ、ないでね」

「はは。笑わねーよ」


彼の言葉に、複雑だなと思いながら、私は紙束へ目を移した。

どうやら、こちらが先に台詞を言うようだ。


私は自分の台詞に目を通すと、紙束を下へ置いた。

そして、スジュナへ向き直る。

その小さな役者の卵は、私の言葉を待っていた。

私は小さく深呼吸をして、立ち上がる。

口を、開いた。


「『あら、可愛らしいお嬢さん。どこから来たの?』」


片手を、スジュナのほうへ伸ばす。