月夜の翡翠と貴方【番外集】



「うん!いいよ、ありがとう!」

…私なんかで、いいんだろうか。

つまりこれは、明後日ある演技の試験の練習だ。

素人である私が、練習相手になれるか、不安である。


スジュナは、第一項目の演技に使うらしい椅子を、とてとてと歩きながらこちらへ持ってきた。

「…あのね。スジュナ、いつもパパといっしょに練習してたの」

ここに座って、と言われ、戸惑いながら椅子に座る。

スジュナは優しい声で、目を細めながら、話しはじめた。

「でもパパ役者さんじゃないし、相手のひとの役は女の人だから、いつもパパ、大変そうだったの」

…相手役は、ロゼだ。

それに合わせて台詞などは作られているだろうし、役者でないラサバには難しいかもしれない。

「でも、ほかの役者さんはいそがしそうだから…おねえちゃんがやってくれるの、うれしい」

ほんのりと頬を朱に染めて、えへへと笑う。

そんな少女に目を細めながら、私は「そっか」と小さく笑った。