「……どう思ってた、ねえ…」
口元の笑みを絶やさないまま、ルトは静かに地図をたたんだ。
そして、こちらを向いて、私と目を合わせる。
「なんで優しかったのかっていうのは、もとから俺が『奴隷』は虐げるべきだっていうのを、面倒だって思ってたからだよ」
態度をコロコロ変えられるほど、器用じゃないんだよと笑う。
私はそんな彼の、優しい色をした深緑をじっと見ていた。
「チャンスをあげたのは…そうだなぁ、お前が井戸のとこで、俺を睨んだときかな」
予想していなかった返答に、眉を寄せる。
何故、という顔をすると、ルトは楽しそうに「だってさぁ」と言った。
「それまで俺が見てきた奴隷の子って、みんな怯えるんだよ。俺を見て。だから『フードとって』って言ったときに、お前が『無理です』って睨みながら言うもんだからさぁ」
…私、睨んでいただろうか。
いや、あまりにルトを敵視しすぎて、我知らず睨んでいたのかもしれない。



