…奇跡みたいな、こと。

ルトが自分の意思で、私の手をつなぎ、笑いかけてくれる。


「………ルトは、優しいね」


ぽつりと呟くと、いきなりどうしたの、と笑われた。


「………別に」

私は彼が望むのならば、なんでもする。

求められれば差し出し、いらないと言われれば大人しく捨てられる。

そう誓っていたあの頃とは違う。

自分から手を伸ばして、求めても良いのだと、ミラゼは言ってくれたけれど。

…私は、ルトになにもしてあげられない。

なにも返すことができない。

もらってばかりなのは、嫌なのに。