「……………」
ルトも、スジュナの様子に気づいたのか、眉を寄せる。
こちらへ向けられたその目は、『なにかあったのか』という疑問に満ちていた。
「……わからない…」
私が首を横に振ると、ルトはますます困った顔をした。
…スジュナはただ、あの小柄な少女の去っていったあとを、じっと見つめていた。
*
それからしばらく、ジェイドとルトは稽古の様子を隅で見ていた。
「すげーなぁ…」
「うん…」
みな強く凛とした目をして、声を目一杯に出して、自身の演技の質を高めている。
その場の空気は真剣そのもので、誰ひとりとしてその空気を壊さんとする者はいなかった。
稽古とはいえ、やはり真近で見る役者の演技には、見入るものがある。
次の休憩に入るまで、ふたりは惚けたように稽古を眺めていた。
「あら、こんなところにいたのね」
気持ちよく汗を流しているクランが、微笑みながらこちらへ来た。



