「……………」

ルトも、スジュナの様子に気づいたのか、眉を寄せる。

こちらへ向けられたその目は、『なにかあったのか』という疑問に満ちていた。

「……わからない…」

私が首を横に振ると、ルトはますます困った顔をした。


…スジュナはただ、あの小柄な少女の去っていったあとを、じっと見つめていた。






それからしばらく、ジェイドとルトは稽古の様子を隅で見ていた。


「すげーなぁ…」

「うん…」


みな強く凛とした目をして、声を目一杯に出して、自身の演技の質を高めている。

その場の空気は真剣そのもので、誰ひとりとしてその空気を壊さんとする者はいなかった。

稽古とはいえ、やはり真近で見る役者の演技には、見入るものがある。

次の休憩に入るまで、ふたりは惚けたように稽古を眺めていた。



「あら、こんなところにいたのね」

気持ちよく汗を流しているクランが、微笑みながらこちらへ来た。