「寒い…」

当たり前だ。

11月の終わりなんだから。

逆に暑かったら怖い。

身が切られるような寒さは、私の心を痛いくらいに冷やした。

平岡若葉(ヒラオカワカバ)、27歳。

つきあっていた彼氏の浮気現場から、ケーキを投げつけて逃げたのは、約1時間前。


今日は、彼氏の誕生日だった。

定時よりも早く仕事を終わらせ、行列のできるケーキ屋さんで予約していたバースデーケーキを受け取り、彼氏の家へ向かった。

そしたら、
「……あっ」

青い顔をした彼氏と視線がぶつかった。

彼氏の隣には、キャバ嬢よろしくのハデな女。