隆雪さんを受け付けついで
装っていた女形の姫Takaではなくて、
中性的な中にも神秘的で
それでいて力強さのある
例えていうなら、
冥王ハデスのような
闇の深さと深い愛を表した
そんな新衣装に身を包んで姿を見せた
雪貴。




新衣装に身を包んだ
彼は一人で、
ステージ中央へと歩いてくる。




シーンと静まり返るファンは、
TAKAに視線を集める。





「今日は天の架け橋。

 新生Ansyal 1st公演に
 お越しくださって有難うございます。

 先代Taka、兄である隆雪が他界して
俺自身、立ち直るのに時間がかかりました。

 そして、今日……
 ようやくこの日を迎えられたのは
 俺と兄貴にとって、
 心から大切なその人に
 支えられ続けたからでした。

 天の架け橋は、
 俺たち三人の絆。
 
 そして兄貴が愛したAnsyalと、
 俺が受け継いで育てていく新生Ansyal。

 その二つの心の架け橋と慣れる
 ポジションでありたいと
 決意して決めた公演名です。

 今日、この時を持って
 TAKAの表記、
 アルファベットの大文字表記。

 兄貴は、皆さんにこれからも愛され続けるよう、
 TAKAYUKIとして、
 Ansyalに残り続けます。 


 それでは、この場を借りて、
 俺と兄貴を支え続けてくれた
 俺たちにとって大切な人を
 紹介させてください。

 唯ちゃん」




ステージから
優しく雪貴の声が降り注ぐ。


一斉に私の方へ集中してくる視線。



ステージから、
会場内に駆け下りた雪貴は
その長い足で、
ひょいっと柵をまたいで
瞬く間に、私をお姫様抱っこ。



えっ?

えっ?

うえっ?



悲鳴にも
似た歓声が周囲を包み込む中、
何故か私もステージの上から、
観客たちを
見下ろす側に連れられていた。