「うん。
 ドセンで今日も叫ぶから。
 
 雪貴も頑張って。
 隆雪さんと一緒にさ」


そう言って私は裏口から、
LIVE前へと移動する。



会場前には、
活動休止前と
変わることのない風景が
広がってる。



コスプレを楽しんでる集団。
写真撮影会に賑わう会場前。



開場時間を待って、
それぞれの立ち並ぶ人の群れ。




雪貴から手渡された、
反則的な、神番。


整理番号 1番のチケットを
握りしめて、並ぶ私。




「こんばんは、唯香さんだよね。
 雪貴くんの」


突然、すぐ後ろの人から
声がかけられる。


何で名前知ってるの?
私、アナタと交流会った?


「あっ、ホントに百面相してる。

 唯香さんって、
 噂通り楽しい人みたいね。

 私、晃穂【あきほ】。

 Ansyalネームは、
 憲の本名の『紀【あき】』なんだけどね。

 いつものお友達、今日は楽屋なんでしょ。
 だから今日は私が来たわけ」


そうやって話しかけるその人。


「晃穂さん?」

「そうよ」

「頼まれたって誰に?」

「誰にって、アンタ鈍すぎでしょ。
 
 アンタの脳内、
 Takaしか入ってないからでしょ。

さっき、私のAnsyalネームに、
 誰の漢字が入ってるって言ったでしょうか?」


えっ?


晃穂さんのAnsyalネームも「あきほ」で、
漢字は……確か、憲さんの本名がどうのって……。


「えぇぇぇぇぇっ。

 のっ、憲さん?」


慌ててトーンが高くなった口を
晃穂さんは慌てて塞ぐ。


「なにバカしてんのよ。
 そんなに驚かなくてもいいでしょう」



あっけらかんとした、
パワフルな女性は、
私で楽しんでる。