学校での唯ちゃん情報は、
唯ちゃんは素直に教えてくれない。


その辺はちゃっかり音弥からの定期報告。


マニアぶりな唯ちゃんの観察報告メールに
俺は笑いながら、文章に読み続ける。



ありふれた日々は、
いろんな形に姿を変える。



同じ日々が時として苦しいだけの時間として
刻まれていくこともあれば、
輝ける時間として刻まれていくこと。



離れていてもお互いの存在を
噛みしめながら、
俺たちのそれぞれの時間は過ぎていった。




季節は過ぎ、
高校三年生になった秋。


俺は留学最終課題である、
音楽祭の日を迎えていた。





前日から緊張しっぱなしの俺は、
DTVTメンバーと共に
控室へと連れていかれる。




その場所に姿を見せていたのは、
Ansyalのメンバーと裕先生。



そして事務所の社長夫妻。




託実さんについてきたらしい、
百花さんの腕には、
託実さんの長女・満月【みつき】ちゃんの姿。



その後ろ……、
カクテルドレスで盛装した
唯ちゃんが、姿を見せた。




「雪貴……、
 今日は楽しみにしてる」



そう言って微笑んだ唯ちゃんに
思わずムギュっと抱き付く。



「こらっ、雪貴。
 タキシードが乱れる。
 
 ほらっ」


そう言いながら俺の体を
両手で肩を抑えて引き離すと、
そのまま蝶ネクタイを手早く直してくれた。



音楽祭の開始時間が迫って、
唯ちゃんたちは、
DTVT来賓用のボックス席へと
移動していった。