文化祭の後、
再びAnsyalは活動休止に突入して
俺は留学先へと戻った。



留学の最終課題は、
DTVTの演奏会にゲスト出演すること。


その際のピアノは、
DTVTのピアニストである、
惣領国臣とのピアノデュオで演奏する
俺が監修した、オリジナルピアノの協奏曲。

出演するステージは、
英国王室が主催する音楽祭で、
生中継で放送されることが告げられた。


幾らなんでも、
国臣さんハードルあげすぎだよ。


なんて毒づきながらも、
再び、ピアノ漬けの毎日を送り始めた。



伊集院さんの課題である、
テレーゼが納得いく演奏が出来るようになった頃には
計算しつくされたかのように、
再びオクターブ奏法を多くする曲に向き合っても
腱鞘炎の痛みはなくなった。


充実した日々。



そして唯ちゃんとの遠距離恋愛も、
俺たちらしい形で今も続いていた。



インターネットの回線を使って、
お互いネット電話で対話を楽しむ時間。


そして他愛のない会話は、
何時しか、唯ちゃんの
ピアノ教室へと変化していく。



学校に通う授業時間以外は
ピアノ尽くしの日々。


寝ている時間ですら、
ピアノを弾いてる夢を見る。


そんな時間も俺にとっては
かけがえのない時間だった。






俺の傍には、
離れていても唯ちゃんがいる。



唯ちゃんを感じられる。




それだけで……力が次から次へと
溢れてくるみたいだった。





唯ちゃんはと言えば、
やっぱり事務所が用意してくれている
俺のマンションには
今も生活することは出来ないと
自分の1Rマンションを
中心に生活しているみたいだった。



どうして?って質問した俺に
唯ちゃんが答えた返事は


「ベッドが広すぎるもの。

 雪貴がいないの意識し過ぎて、
 寂しくなるでしょ」


そんな風に答える唯ちゃんが
やっぱり愛しくて。


今は一週間に一回。

唯ちゃんが休みの日に、
俺のマンションには合鍵で
換気に出向いてくれてるみたいだった。