「……これ……」

「唯香ちゃんがどれだけ皆に愛されてるか
 気が付けたかな?

 世間を賑わせた一連の騒動も、
 これで終結。

 唯香ちゃんと雪貴は、晴れて事務所公認として
 受け止められる」


TVから流れてくるのは、
隆雪さんが私にくれた大切な一曲。

雪貴が私の為に作ってくれた一曲。

今は……雪貴の心の中に燻っていた
ありのままの本音。


気が付いたら画面に食い入るように
夢中になりながら、
涙を流してる私がいた。

Ansyalの記者会見が終わっても、
涙は止まらない。


ふいに携帯電話が鳴り響く。

鞄から取り出した携帯を確認すると
発信者は百花。


「もしもし」

「唯香、託実から聞いた。

 倒れたって言ったけど、落ち着いた?
 そこに裕兄さまいるんでしょう?」

「うん。
 今日は無理しちゃだめだよって
 言われたけど……」

「うん、あたりまえよ。
 Ansyalの記者会見、見たわよね。

 雪貴幸せにできるのは、
 唯香しかいないし、唯香を幸せにできるのも
 雪貴しかいないんだから。

 何があっても手放さないのよ」


百花はそう言うと、電話を切った。


携帯を閉じてテーブルに置くと、
裕先生はくすくすと笑ってた。


「ごめん……。

 百花ちゃんの声が大きくて、
 電話越しに聞こえてた。

 当初の印象と違って
 百花ちゃんはパワフルだね。

 託実が百花ちゃんに敷かれてしまうのも
 時間の問題かな」


そんなことを言いながら、
裕先生はノートパソコンを開いて
作業を始めたみたいだった。



シーンとした部屋に、
カチャカチャとキーボードを叩く音だけが
広がっていく。


再び携帯電話を手に取って、
映し出すのは、
雪貴の名前と電話番号。




声が聴きたい……。




ただその思いで、
発信ボタンを押す指先に力を込める。



暫くコールが続くものの、
電話にでる気配はない。



諦めて電話を切ろうと思ったとき、
電話の向こうから、
大好きな雪貴の声が聞こえた。